量子乱数発生器のAIシステムへの適用
最終更新日:2026.08.28乱数
生成AIやAIエージェントの進化により、脆弱性の発見や攻撃の自動化も進んでいます。
こうした中、AIシステムではモデルそのものだけでなく、認証や暗号化などを支えるセキュリティ基盤にも目を向ける必要があります。
その一つが「乱数」です。
暗号鍵や認証トークンなど、AIシステムのさまざまな場面で乱数が使われています。
本記事では、AIシステムにおける乱数の役割とリスクを整理し、量子乱数発生器(QRNG)を活用する重要性を解説します。
AIシステムを支える、さまざまな乱数
AIシステムでは、目的の異なるさまざまな乱数が使われています。
たとえば、学習データのシャッフルや重みの初期化、dropout、LLMのトークンサンプリングなどで使われるのは、AIの処理や学習を支えるための乱数です。
こうした用途では、実験結果を再現するために、あえて同じシードを使うこともあります。
一方、暗号鍵やAPIトークン、nonce、IVなど、セキュリティに関わる乱数には第三者から予測されにくいことが求められます。
ここでは、再現性よりも予測困難性が重要です。
このように、AIシステムで使われる乱数はすべて同じ役割を持つわけではありません。
乱数生成の弱点は、システム全体の弱点になる
このように、AIシステムでは用途に応じてさまざまな乱数が使われています。
中でも、暗号鍵やAPIトークン、nonce、IVなどに使われる乱数は、セキュリティを支える重要な要素です。
そのため、これらの乱数を生成する仕組みに弱点があると、認証や暗号化が正しく設計されていても、システム全体の安全性に影響する恐れがあります。
さらに、乱数生成器そのものではなく、生成した乱数をアプリケーションへ渡す経路が改変されることも考えられます。
実際、USENIX Security 2024では、機械学習モデルの安全性評価に使われる「Randomized Smoothing」に対し、乱数生成器をわずかに改変することで、モデルの堅牢性評価を大きく揺るがすことが示されました。
乱数は単なる補助的な要素ではなく、使われ方によってはシステムの安全性そのものに影響を与えることがあります。
では、安全な乱数生成では何を確認すべきなのでしょうか。
次章では、乱数の見た目のランダムさだけでは判断できない「エントロピーの信頼性」について見ていきます。
重要なのはエントロピーの信頼性
乱数の安全性は「どのように乱数を生成するか」だけでは決まりません。
では、その乱数がセキュリティ用途に適しているかを、どのように考えればよいのでしょうか。
重要になるのが、乱数の元となるエントロピーです。
エントロピーとは、簡単にいえば「どれだけ予測しにくい情報が含まれているか」を表す考え方です。
出力された数値が一見ランダムに見えていても、その生成源に十分なエントロピーがなければ、予測可能性が残る可能性があります。
NIST規格の「SP 800-90B」では、こうしたエントロピーの生成原理だけでなく、予測されやすさの評価や稼働中の異常を検知する考え方が示されています。
つまり、安全な乱数基盤を考えるうえでは、「ランダムな数字が出ているか」だけを見るのではなく、どこからエントロピーを得て、品質をどう確認し、最終的にアプリケーションへどう届けるかまで含めて設計することが重要です。
そして、このエントロピー源に量子現象を利用する方法が、次に紹介する量子乱数発生器(QRNG)です。
QRNGがもたらす、質の高いエントロピー
信頼性の高いエントロピー源を持つ乱数生成方法として注目されているのが、量子乱数発生器(QRNG:Quantum Random Number Generator)です。
QRNGは、光子の振る舞いや量子状態の揺らぎなど、量子力学的な物理現象を利用して乱数を生成します。
アルゴリズムによって乱数列を生成する疑似乱数とは異なり、ソフトウェア処理とは独立した物理的なエントロピー源をシステムに追加できることが大きな特徴です。
一方で、QRNGを選ぶ際は「量子現象を使っている」という点だけで判断するのでは不十分です。
セキュリティ用途では、どのような物理現象からエントロピーを得ているのか、そのエントロピー量を評価できるか、稼働中の異常を検知できるかまで確認することが重要です。
たとえばNIST SP 800-90Bでは、エントロピー源の評価やヘルステストなどの考え方が示されています。
こうした規格を踏まえて設計・評価されたQRNGであれば、単に「ランダムな値を生成する装置」ではなく、エントロピーの根拠や状態を確認できる乱数基盤としてシステムへ組み込みやすくなります。
監視できる量子エントロピー基盤
QRNGでは「量子現象を使っていること」だけでなく、生成されるエントロピーをどこまで評価・監視できるかが重要です。
そこでQuside社では、この点を重視した量子乱数ソリューションを展開しています。
Quside社の量子乱数発生器は、乱数の元となる仕組みについて、米国NISTが定めるSP 800-90Bの認証を取得しています。
これは、乱数の元となる情報が十分に予測しにくいか、装置が正常に動き続けているかなどを定めた規格です。
つまりQuside社の量子乱数発生器は、乱数がどのような仕組みで生まれ、十分なランダム性を持ち、異常なく生成されているかまでを確認しながら使えることが大きな特徴です。
また、システムに合わせて導入できる様々なラインナップを取り揃えています。
Quside社の量子乱数発生器 製品ラインナップや詳しい仕様はこちら
まとめ
AIシステムの安全性を考えるとき、注目されやすいのはモデルやアプリケーションですが、それを支える認証や暗号化の仕組みも欠かせません。
そして、その基盤の一つが乱数です。
重要なのは、単に「量子乱数を使うこと」ではなく、その乱数の品質が確認され、異常を検知でき、既存のシステムに適切に組み込めることです。
AIの活用領域が広がる今だからこそ、モデルそのものだけでなく、その安全性を支える乱数基盤に目を向けてみてはいかがでしょうか。
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