量子時代の暗号化における、PKIの課題とハイブリッド暗号の活用
最終更新日:2025.09.10乱数
企業のセキュリティ基盤を支えるPKI(公開鍵基盤)は、現在でも多くの組織で利用されています。しかし従来型のPKIは、将来的な量子コンピュータの脅威に対する脆弱性が危惧されています。
その一方で、新たな選択肢とされるPQC(耐量子計算機暗号)もまだ発展途上で、不安要素が残ります。
こうしたジレンマを解消する手段として、「ハイブリッド暗号」が注目され始めています。
現在のPKIが晒されているリスク
PKIは長年セキュリティの基盤として活用されてきましたが、急速に変化する環境の中でいくつもの課題に直面しています。
ここでは、その代表的なリスクを整理します。
エントロピーの信頼性が低い
従来のPKIでは、システム時間やネットワークトラフィックなど、古い仕組みに依存してエントロピー(乱数の元)を生成しています。
しかし、これらの方法は予測されやすく、乱数の質が十分でない場合があります。
その結果、鍵生成の安全性が損なわれ、攻撃者に突破口を与えてしまうリスクがあります。
新しいニーズに追いつけていない
クラウド環境やIoTデバイス、短期間で更新が必要な証明書など、近年のITインフラは動的で複雑さを増しています。
従来のPKIはこうした新しいユースケースに十分対応できず、証明書管理の煩雑化やエントロピーの枯渇を招きやすい状況にあります。
専門知識を持つ人材の不足
PKIやエントロピー生成は高度で専門的な領域です。
しかし多くの企業では十分な知識を持つ人材が不足しており、適切に管理できないまま運用が続けられるケースが少なくありません。
その結果、証明書の有効期限切れや管理ミスといった人為的なリスクも生じやすくなります。
ハイブリッド暗号とは?
ハイブリッド暗号とは、従来の暗号アルゴリズムと次世代の暗号方式を組み合わせ、二重の安全性を確保する仕組みです。
両方のアルゴリズムで暗号化と検証を行うため、もし一方が突破されたとしても、もう一方が防御を担い続けます。
まさに「バックアップを備えた堅牢な仕組み」と言えるアプローチです。
この仕組みが注目される背景には、量子コンピュータの登場に備えたPQC(耐量子計算機暗号)の存在があります。
PQCは将来的な脅威への有力な対策とされる一方で、まだ発展途上にあり、アルゴリズムや実装の安全性が十分に検証されていません。
そのため、PQC単独で置き換えるのはリスクが残ります。
ハイブリッド暗号は、このジレンマを解消する方法です。
既存の実績ある暗号とPQCを組み合わせることで、現在の安全性を維持しながら、未来の脅威にも対応できる「つなぎ」として機能します。
そして、この二重の防御を実現するには、暗号鍵の安全性を支える高品質なエントロピーが不可欠です。
ハイブリッド暗号の活用例
ハイブリッド暗号は、次のような場面で活用が進められています。
TLS通信の保護
ウェブやクラウドサービスに欠かせないTLS接続において、転送中のデータを量子コンピュータによる解読リスクから保護します。
データの暗号化
全てのデータを暗号化することで、「今は解読できずともデータを収集しておき、後で量子コンピュータで解読する」HNDL攻撃と呼ばれる攻撃に対抗できます。
保存データの安全性を将来にわたり確保します。
デジタルIDの保護
IoTデバイスやクラウド環境などで利用されるデジタル証明書を、現在と将来の双方のリスクから守ります。
デジタル署名の維持
ソフトウェアやドキュメントの署名を改ざんから守り、その整合性を将来にわたって保護します。
御社にハイブリッド暗号を導入する包括的ソリューション
ハイブリッド暗号の二重の防御を実現するには、暗号鍵の安全性を支える高品質なエントロピーが不可欠です。
これを安定的に供給し、さらに証明書やPKI全体を効率的に管理できる基盤を整えることで、初めてハイブリッド暗号は実運用に耐えうるものになります。
そこで量子技術を活用したエントロピー生成ソリューションを提供するQuside社と、PKIおよび証明書ライフサイクル管理ソフトウェアを提供するKeyfactor社が連携し、次世代に対応する包括的なソリューションを実現しています。
安全なPKIの再構築
古いPKIや分散して管理されている認証局環境を統合し、拡張性・柔軟性に優れたEJBCAを基盤に据えることで、あらゆるデバイスやワークロードに対してシームレスに証明書を発行・管理できます。
証明書の自動管理
Keyfactor Commandを活用することで、証明書のライフサイクル全体を自動化・可視化できます。
更新漏れや管理ミスといった人的リスクを防ぎつつ、運用負荷も削減できます。
測定可能なエントロピーの供給
Quside社の量子乱数発生器(QRNG)は、常に測定可能で高品質なエントロピーを生成します。
これにより、暗号鍵の強度を保証し、量子コンピュータ時代にも揺るがないセキュリティ基盤を構築できます。

まとめ
サイバー攻撃は日々高度化し、量子コンピュータの登場によって従来の暗号基盤が通用しなくなる可能性も現実味を帯びています。
今のPKIを使い続けるだけでは将来のリスクを防ぎきれず、かといってPQC単独に移行するのも不安が残ります。
こうした状況で、既存の仕組みを生かしつつ次世代にも対応できるハイブリッド暗号は有力な選択肢です。
そしてその実現に不可欠なのが、測定可能で高品質なエントロピーを供給するQuside社の量子乱数発生器です。
すでにKeyfactor社の証明書ライフサイクル管理ソリューションにも採用されており、業界でも信頼を獲得しています。
未来に向けて安全なセキュリティ基盤を築く第一歩として、量子乱数発生器を導入することは、暗号基盤を長期的に守る確かな投資となるでしょう。
Quside 量子乱数発生器
Qusideの量子乱数発生器は、量子技術によって高速で信頼性のあるエントロピーを生成できます。
高速かつバリエーション豊富で使いやすい真性乱数発生器です。

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