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5G対応デバイス(通信機器)の開発・製造に必要なOTA試験とは?

最終更新日:2022.09.125G

5GではMassive MIMOによるビームフォーミング、ミリ波の対応など4G/LTEとは大きな差異が存在します。その差異のために、従来型のRF端子へ有線接続を行い信号送信をする方式(パッシブ測定)の試験では対応できず、OTA試験(Over The Air Testing:電波を空間に飛ばして行なう試験)が必須です。

ここでは、通信デバイスメーカー様やチップセットメーカー様が行なう必要がある5GのOTA試験を中心に、4G/LTEやWi-Fi、Bluetoothに対してもスコープとなるOTA試験の種類や、OTA試験を実施する上で取り得る選択肢について解説いたします。

OTA試験とは

OTA(Over-The-Air)試験とは、空間に電波を飛ばして行なうテストを意味します。つまりOTA試験は有線によるテストと比較し、より実際の利用状況に近い方式のテストと言えます。

ただし空間には様々な電波が飛来しており、それら外部から飛来する電波を遮断する空間(電波暗室や電波暗箱)内にて試験を行なう必要があります。
また、電波暗室・電波暗箱内であっても、正確な試験のためにはテスト対象の機器(DUT)とその通信に用いる電波以外の電磁波の影響を抑制する必要があり、テストベンチの構成には十分な配慮が必要です。

OTA試験の目的としては、各国の法規に対する対応のため、標準への準拠を確認するための適合性試験(コンフォーマンステスト)対応のほか、実環境により近い状況を再現しトラブルの無い高品質な製品を開発するための取組みのため行なわれます。

ここで、各無線通信におけるOTA試験について解説します。

4G/LTEまでのOTA試験

LTEでは、デバイスのパフォーマンステストはRFコネクタへの接続により直接信号を送信することによりテストを行なう方式が一般的であり、OTA試験が求められる部分は一部でしかありませんでした。
OTA試験では送受信の特性検証と、アンテナからの放射パターンを測定します。

5GのOTA試験

5G FR1のOTA試験

5G FR1におけるOTA試験によるパフォーマンス要求仕様として、スタンドアロン(SA)及びノンスタンドアロン(NSA)方式共に、MIMO OTAスループット(単位時間における伝送サイズ×成功したスロット数)、Total Radiated Multi-antenna Sensitivity (TRMS)が存在します。

OTAテスト方法は3GPP TR 38.834にて具体的に言及されており、OTAでの測定により総放射電力(TRP)及び総放射感度(TRS)を算出する必要があります。

5G FR2のOTA試験

FR2(ミリ波帯)では電波の直進性が高くパス損失が多いことから、対応策としてMassive MIMOによるビームフォーミングが適用されています。MIMO OTAテストはビームフォーミングとシグナリングのアクティブテストが必要です。結果、測定システムはより複雑化しており、試験設備への要求も増大します。

また測定業務自体の複雑性も増し、テストの再現性を高めるための精緻なセットアップ、テスト実施における所要工数の増大、テスト結果を受けてのチューニング工数の増大に繋がっており、企業の研究・開発者様には大きな負担が生じます。

そのため、企業内でのOTA試験実施の負担を軽減するための、OTA試験方式の考案や改善、OTAテストシステムにおける自動化・精密化などの工夫がテストシステムベンダーによって行なわれております。

その他のOTA試験(Wi-Fi、Bluetooth)

電波を空間に放射して通信を行なうものとして他にもWi-Fi(WLAN)、Bluetoothなどがあります。
これらに関してもOTA試験を行なうことが望ましく、また4G/LTE・5G通信デバイスにはWi-FiやBluetoothで通信できる機能が付属しているデバイスも多いことから、5Gと同じテストシステムでまとめてテストできると便利です。

OTA試験の方式

無響チャンバー(Anechoic Chamber)でのOTA試験

正確な測定には外部からの影響及及び環境に存在する電磁波の影響を最小限に抑えることが必要です。
そのために無響チャンバー(電波暗箱・電波暗室)を用いて中でテストを行ないます。

DFF(Direct Far-Field:直接遠方界)方式によるOTAテスト

OTAテストにおいて最もシンプルな構成がDFFです。
DUTが3Dで角度を変えながらアンテナと見通し(LOS)環境で直接無線通信を行ないます。

電波による通信を行なう際には、自由空間のインピーダンスに安定する遠方界(Far-Field)で行なうことが基本ですが、OTAテストにおいてもアンテナから放射された電波が遠方界となる位置(フラウンホーファー領域)にある必要があります。つまりアンテナとDUTは適切な距離を取る必要があります。

Rはデバイスのアンテナの開口部距離の二乗を波長λで割った値です。

上記数式のとおり、波長が短いミリ波ではアンテナアレイが長くなることで必要な距離が激増します。つまりDFF方式かつFR2では対象のデバイスサイズによりチャンバーのサイズが10mを越えるなど、非現実的なサイズになり得るということです。
これは研究施設におけるフットプリントの増大、設備コストの増大に繋がり大きな負担となります。
また距離が離れることでパス損失も生じます。

IFF(Indirect Far-Field:間接遠方界)方式によるOTAテスト(CATR)

5Gミリ波帯で生じるDFF方式の課題を解決する上で有効な手段として、電波を間接的にDUTに送信するIFF方式があります。

アンテナから放射した電波を曲面リフレクターで反射させ、近傍界での球面状の電波を平面波に変換し、遠方界を再現します。
この方式の最大のメリットは、DFFと比較し短い距離で測定が可能だということです。
3GPPにもDFFの代替として正式に認められている実用的な方式で、CATR(Compact Antenna Test Range)と呼ばれます。

残響チャンバー(Reverberation Chamber)でのOTA試験

5G通信を行なうユーザの実環境を再現する上で、マルチパス環境の再現は欠かせません。
実験室で疑似的にマルチパス環境を再現する方法として、3D MPAC(Multi-Probe Anechoic Chamber)があります。

3D MPACではテスト対象機器(EUT)の周囲に複数のアンテナアレイを配置し、プローブから指向性のある信号をチャンバー内に注入して行ないます。疑似的に試験環境内でマルチパス環境を再現し、ドップラーシフトやフェージングなど、現実に生じうる現象を加味してEUTのテストを行ないます。

しかしFR2では必要なプローブ数が多すぎることから3D MPACの適用が難しく、代替として残響チャンバー(リバブレーションチャンバー)の活用が実用的な方法として提言され、使用されています。

残響チャンバーとは

残響チャンバーとは、外部からの電磁波はシャットアウトしつつ、チャンバー内の電波は意図的に反射・攪拌させる機構を持つチャンバーです。

実運用環境で生じる現象を疑似的に再現することにより、ユーザの利用シーンにおける品質テストを強力に推し進めることが可能です。

OTA試験を行なう方法

1.テストベンダーへ依頼する

テストベンダーへの依頼は、基本的にコンフォーマンステスト(標準・規格に対する適合性確認試験)の際に行なわれます。コンフォーマンステストを行なうことができる設備と、無線テストに関する専門知識を備えています。

2.自社でテスト環境を構築する

OTA試験が必要な通信機器の研究開発は試行錯誤・チューニングを何度も繰返し行なう必要があるでしょう。また、規格への適合は最低限必要なハードルであるとして、品質面をさらに磨き上げ、トラブル時に迅速に対応できる環境を整備するとしたら、社内にそれを見越した自社の技術・ビジネス要件に適合するテスト環境が必要になります。

自社で構築する際に必要なもの

必要なものは、行ないたい試験に適合するチャンバー及びテストシステムを構成する一式です。3GPP規格は常にアップデートされるため、自社で独自のシステムを構築・維持することは現実的ではなく、アップデートが提供される既製品を購入されることをお勧めいたします。

お勧めのOTA試験用チャンバー及びテストシステム

Emite Hシリーズ(3GPP認定 5G FR1/FR2用中型無響チャンバー)

5GのOTA試験においてFR1+FR2バンドの組み合わせを同時にテストできる市場で唯一のOTAテストシステムです(※メーカー調べ)
CATR、DFF、SNFという3GPPに認められている3種類のOTA測定に対応しています。

Emite Hシリーズ

Emite Eシリーズ(自動テスト機能が豊富な中型リバブレーションチャンバー)

5G、4G/LTE、WLANのOTA試験が人間の介入無しで一晩中テスト継続が可能です。研究開発や検証に役立つ様々な測定を行なうことができます。

Emite Eシリーズ

Emite PTシリーズ(携帯電話及び無線機器のプロダクション向け小型リバブレーションチャンバー)

5G、4G/LTE、WLANに対応するOTAテスト用小型リバブレーションチャンバーです。最大8つのデバイスを同自にテスト可能なため生産性が高く、製造時の品質管理に利用可能です。

Emite PTシリーズ

3GPPにて2022年3月に、5G NR Release17が仕様凍結されました。今後IoTデバイスの5G活用が加速することが見込まれます。
そしてRelease18の検討が開始されています。

随時更新される最新の標準に対し、Emiteのチャンバーはモジュール式でアップグレード可能であることもお勧めしている理由です。

OTAテストシステム・無響/残響チャンバーはDUTのサイズや目的により選定を行なう必要がございます。ここに記載していないモデルもあり、お客様に合わせてご提案可能です。
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