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車載向けNFCデバイスのテストシステムの重要性

最終更新日:2022.07.13車載・コネクテッド

NFCとは

NFC(Near Field Communication)はSuica等の交通系ICカードや、ICチップを搭載したマイナンバーカード、パスポートなどの公的身分証明書でも採用されている近距離無線通信技術です。

近距離かつ非接触であることから端末の物理的損耗が抑制されるというメリットがあり、またタイプによっては高いセキュリティ性を有し、近年その利便性から適用範囲が拡大しています。

車載分野でのNFC適用拡大

その一つが本項で解説する車載分野です。既にNFCがiPhoneやAndroidなどスマートフォンに搭載されることが一般的であることを受け、コネクテッドカーの概念と相まって様々なユースケースでNFCの活用検討が進んでいます。

例えばNFCを搭載したスマートフォンを自動車のキーとして活用することが検討されていますが、NFCはスマートフォンのバッテリーが切れてしまった時にも動作することから、利便性が高くかつ非常に重要な機能です。

RFはなじみ深くとも、NFCはこれから

車載機器サプライヤー・自動車メーカーの皆様にとって、キーレスエントリーで用いられるRFにはなじみ深いものと思いますが、交信可能距離が概ね10cm程度の電磁誘導方式であるNFCに対してはノウハウの蓄積が不足している場合もあるかと思います。NFCが有望な技術であることがわかっていても、次世代カー開発における技術検討・妥当性確認や品質管理のシーンで悩まれるかもしれません。

ここで、RF(LFやUHF)とNFCの製品開発における大きな違いについて言及いたします。
RFの研究開発ではネットワークアナライザが用いられますが、NFCの機器開発ではネットワークアナライザでは不十分です。

なぜならNFCには相互運用性(インターオペラビリティ)が重要な概念としてあり、多様な規格の、多種多様なユーザ独自のNFCデバイスと接続し相互に運用できることを保証する必要があるため、それに対応しようとするとネットワークアナライザでは圧倒的に機能不足である(効率が悪い)ためです。

つまり、キーレスエントリーにおけるワイヤレスキーやイモビライザーキーであれば特定一種類の自社開発デバイスとの通信さえ保証すれば良かったものが、NFCではNFC Forumなどの共通規格をベースとして様々なメーカーが実装したNFCデバイスがキーになるため、それらをカバーする必要があるということです。
この特性から、NFCは標準への適合性が極めて重要になります。

弊社では車載向けNFCデバイスのテストにおいてはネットワークアナライザでの測定では不十分であることから、専用のNFCテストシステムの利用をお勧めしております。

さて、ここではNFC搭載機器の研究開発を開始するには何をテストできるようにするべきなのか、研究開発が済み製造時には何をどのようにテストすべきなのか、またテストシステムの重要性について解説し、お勧めの製品をご紹介いたします。

車載機器へのNFC活用の増加

NFCについて車載機器への適用が拡大しています。
下記に代表的なユースケースをまとめました。

車載機器のNFCユースケース

キーレスエントリー
イモビライザーキー
デジタルキー(スマートフォンが鍵に)

空調、ミラー、シートの設定

スマートフォンとオーディオシステムの連携 (Bluetooth、Wi-Fiのペアリングアシスト)

支払いサービス

車両診断データの送信

カーシェアリング

車両管理

ほか様々な用途

鍵が開かない・エンジンが掛からない・支払いができないなどはハイリスクですが、オーディオシステムとの連携や空調操作なども品質管理は重要です。

不都合があれば自動車ユーザの体験を大きく損ない満足度の低下に繋がります。そのためどのユースケースであっても品質は重要であり、もしユーザのスマートフォンなどのユーザデバイスを操作端末として使用するのであれば、それら様々なデバイスとの相互運用性を網羅的に確認する必要があるでしょう。

しかし、相互運用性を保証するために世の中に存在するありとあらゆるNFC実機デバイスとのテストを行なうことは非現実的です。そこで、NFCのコンフォーマンステスト(規格適合性試験)にクリアするよう実装することで、標準への準拠を行ない、カバーします。

NFCのコンフォーマンステスト

主要なものとしてNFC Forum(決済以外の全般)や、EMVCo(決済関連の認証)があります。

コンフォーマンステストは、認定された試験場に委託することで行なうことが可能です。
ですが、試験場に持ち込むDUT(テスト対象デバイス)は、あらかじめ適合性が確保されていなければ話が進みません。

そのため、コンフォーマンステストにおいて試験場側で用いられるNFCのテストツールと同等の検査が自社内で行えるツール(認定テストツール)を導入し、試験場に持ち込む前にテストケースをクリアしておくことをお勧めいたします。
それを事前適合性確認と呼び、そのためのツールが存在します。

このツールが無ければどうなるでしょう?

NFC Forumのデジタルプロトコルにはテストケースが1300以上あり、手動で全て満足行くように行なうことは困難です。事前適合性確認に用いるテストツールは、これら試験を自動で実行するため、極めて短い時間で正確で網羅的なテストを実行し、相互運用性を確認することが可能です。

製品情報:NFCのコンフォーマンステスト対応ソリューション CTSⅢ

NFCの原理と仕組み

ここでNFCの仕組みを、キーレスエントリー等で用いられているLFやRFと比較して解説します。

NFCは13.56MHz(HF帯)の周波数帯で行なわれる無線通信

NFCで通信が可能な距離は、キーレスエントリーで用いられるLFやRF(UHF)の場合に比べ大幅に短く10cm程度です。

通信距離が短いというだけの差ではなく、ICチップを動作させるための方式から異なります。キーレスエントリーではアンテナとキーに内蔵されたRFタグの間での放射電磁界での交信ですが(電波方式)、NFCではそれぞれの機器が持つコイルを並べることによって生じる誘導電磁界で交信します(電磁誘導方式)。

NFCには方式(Type)がある

日本では、Suica等の交通系であれば応答の早いFeliCa(NFC Type F)、安価なMIFARE(NFC Type A)、マイナンバーカードやパスワードなどセキュリティ性の高さが求められる用途ではNFC Type Bのように使い分けがされています。

NFCには3つのモード(機能)がある

1. リーダ/ライターモード

NFCデバイスがリーダライターとして機能します。NFCタグにはいくつかの種類があるため、それらについて読み書きができる必要があります。
スマートフォンでマイナンバーカードを読み取ることができるのも、このときスマートフォンがリーダ/ライターモードで動作しているからです。

2. カードエミュレーションモード

スマートフォンがNFC(FeliCa)として機能し決済ができるのはこのためです。

3. P2Pモード

NFCは双方向通信が可能です。これを利用してカードエミュレーションモードのデバイスと、リーダ/ライターモードのデバイス間で相互にデータ交換が可能です。

NFC関連のトレンド

市場からは、性能を満たしながらもデバイスやアンテナサイズ縮小化への要求や、スマートフォンの非接触給電との共生などが求められており、それも加味して設計・実装する必要があります。

車載NFC機器のテスト方法

ここまでで、NFCのコンフォーマンステストについてや、NFCの原理について解説してきました。
ここからは実際に車載NFC機器を想定して、テストについて検討します。

尚、各フェーズ毎に適したテスト方法は異なります。

研究開発フェーズでのテスト

研究開発フェーズではNFCの各種機能に対応した研究用の検査装置を用います。

専用の検査装置を用いることで妥当性確認の効率向上・検査品質向上のほか、規格への適合性確認が事前に・オートメーションで可能となることから、製品開発期間の大幅短縮と安心に貢献します。

ネットワークアナライザで見られるもの、できないこと

ネットワークアナライザではSパラメータの測定や共振周波数の確認、アナログ信号の波形確認などは行えますが、製品開発の際にはNFCでは膨大なテストケースが存在する規格対応があり人力では対応は困難です。また、製造フェーズでは対象機器や車体へ組み込まれた状態での性能検査をインラインで行なう必要があり、ネットワークアナライザでは無理や無駄があります。

そこで、NFC専用のテストシステムをご紹介します。
NFC専用の測定器・テストシステムとしてはMicroprossが知名度・実績共に高くグローバルスタンダードと言えます。現在NI(ナショナルインスツルメンツ)社内のNFC Groupとなり、NIブランドから製品を出されています。NI社は幅広くテスト製品を提供していますが、旧Microprossである現NI社NFC GroupのNFC関連製品は引き続き弊社アルテック株式会社が日本における代理店としてご提供しています。

さて、NI(Micropross)は専用のビューアソフトを提供しており、研究開発から製造まで一貫して同じ基準・同じプラットフォームでのテストが可能であることも強みです。研究開発・コンフォーマンステスト・製造までいずれも業界最高ランクの隙のない製品ラインナップと、それを横串で通す共通のテストアルゴリズムや付帯ソフトウェアは、車載など高い水準の品質を求められる分野では特に活きます。

NFCの変調方式はASKですが、専用ツールを使用すると一目で状況を把握可能です。

上からコマンド、変調の状態、アナログ波形を同時に表示。

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